論理学を基礎から〈テキストを読むこと〉だけで独習しようとするひと――こうしたひとにとって役立つかもしれない講義テキストを置いておく。これは某大学で私が担当している論理学の講義のテキストであり、その授業では安井邦夫『現代論理学』(世界思想社、1991年(新装版2021年))も教科書に指定されている。ただし、以下のテキストは、安井の教科書がなくても読むことができる(他方で、「論理学Ⅰ」のテキストを読み終えた後に、その続きとして安井本で述語論理などを学び進めることもできる)。
ちなみに、論理学をまなぼうとするひとの中には《ふつうの散文は却って読みにくく、とりあえず記号を並べてほしい(あとは自分で考えるから)》という方もいると思う。そうした方にとっては、残念ながら、私のテキストは却って読みづらいだろう。なぜなら私のテキストは――最近はこうした言葉づかいがあるらしいが――形式化の背景にある「お気持ち」をできるだけちゃんと説明せんと努めるタイプのものだからだ。思うに、典型的な「文系の」学習者にとっては、このタイプのテキストこそが役立つ。もし全体のタイトルをつけるならば「文系の初学者のための、独りで学べる、読める論理学」となるかもしれない。もちろん典型的な「理系の」方が読まれても問題ない。
「論理学Ⅰ」は古典命題論理を扱う。(1)から(3)まではイントロダクションであり(4)から本題に入る。(4)から(8)までが意味論、(9)から(12)までが構文論、(13)と(14)がメタ理論である。いわゆる極大無矛盾集合を用いた完全性の証明がギャップ無しに行なわれる。「論理学Ⅱ」は、「論理学Ⅰ」と同じノーテーションのもとで、様相命題論理を扱う。こちらも最終的に K, D, T, S4, B, S5などのいわゆる「ノーマルな」システムの完全性定理が証明される。